デフレ脱却、高額商品人気、訪日外国人の爆買い……、こんな景気のいい話は束の間のムーブメントで終わり、個人消費は再び低迷期に突入している。人々は「安売り」や「特売」などのセール品にばかり狙いを定め、財布のヒモは総じて固いまま。
そんな中、小売業最大の“稼ぎ時”といえる年末商戦がスタートした。少しでも消費ムードを高めようと今年からイベント色を強く打ち出しているのが、「ブラックフライデー」だ。
米国で毎年恒例になっている11月第4木曜日の「感謝祭」。その翌日の金曜日から大規模な年末セールが行われる商慣習のことで、その成功にあやかり、日本でも定着させようと各社が企画した。米国生まれのカジュアル衣料品「GAP」や玩具用品「トイザらス」、そして今年はユニクロや家電量販店など日本企業も次々と便乗したことで話題が集まった。
特にブラックフライデー導入に積極的だったのが、巨大小売りチェーンのイオンだ。
11月25日(金)より3日間、全国のイオンやモールテナントも含め約2万店で大規模なセールを実施。食料品や家電、日用品などを中心に最大半額となる目玉商品や、ブラック(黒)にちなんで価格に「96」のつくセール商品を揃え、多くの買い物客で賑わった。
「ブラックフライデーとは知らずにイオンモールに行ったら、施設全体に“衝撃の3日間”と書かれた垂れ幕が掲げられていて驚きました。セール品の詳細を見たら、まるで新春の『初売り』のような価格帯の商品もありましたが、まだ年末年始に使う予算も決めていないので、大きな買い物はしませんでした」(神奈川県在住の40代主婦)
確かに、冬のボーナス前で歳末セールにも少し早いこの時期、日本でブラックフライデーという新しいイベントを根付かせて消費意欲を喚起するのは容易なことではない。
流通アナリストでプリモリサーチジャパンの鈴木孝之氏は、こんな見解を示す。
「ブラックという言葉には“黒字になる”という意味が込められていますが、そんな企業視点でのメッセージはお客さんには関係ありませんし、そもそも日本ではブラック企業に代表されるようにマイナスのイメージがつきまといます。まずはネーミングからして値引きセールとはマッチしません」