この時期になると、スポーツ紙の紙面を飾るのがプロ野球選手の契約更改の記事。億単位の増額や減額のニュースもファンの楽しみのひとつだが、実際にはどのようなやりとりが行われているのだろうか? 阪神タイガース球団社長を務めた野崎勝義氏によれば、
「成績が伸びましたね。2000万円アップでどうですか?」
「数字は横ばいですが、500万アップと考えているんですが」
そんなふうに球団が金額を口頭で提示するところから交渉は始まるという。
「大半の選手が一発でサインです。球団の査定は厳密で反論しづらい。自分で成績表を持ってくる選手もいますが、データでのアピールはほとんど通じませんね」(野崎氏)
そこで選手も考える。ヤクルト、巨人、阪神で4番を打ったキャリアのある広澤克実氏はこういう。
「同じヒット1本でも、“その1本が試合の中でどんな重みがあったか”というのはグラウンドで戦った者にしか分からない。また、大事な試合だからケガを押してまで出た、といった数字には表われない部分があります。そこをアピールしていくんです」
サラリーマンの定年退職に比べれば圧倒的に早く引退を迎える選手側も、一生がかかっているので必死である。
「なかには新聞の切り抜きを用意してきて、他球団の同期や同じレベルの選手の額を示し、“違い過ぎる”と訴える選手もいましたね」(野崎氏)