テレビには出ない──そう公言してきた作家・佐藤愛子さん(93才)が数あるオファーの中から、「この人の番組なら」と選んだのはSMAPの稲垣吾郎(43才)が司会を務める『ゴロウ・デラックス』(TBS系)。稲垣が毎回、ゲストの書いた課題図書を読んで収録に臨む「業界唯一無二のブックバラエティー」番組だ。佐藤さん出演の12月1日の放送で、選ばれたのは女性セブンの連載をまとめ、現在43万部を超えるベストセラーとなっている痛快エッセイ集『九十歳。何がめでたい』(小学館)。
稲垣は本書について、「ぼくらが普段言えないようなことを代わりに言ってくれて、スッキリするような。でも、すごく勉強になりますし」と大絶賛。佐藤さんにいの一番に質問したのは、どうしてこの番組に出演したのか、ということだった。
実は佐藤さんのもとには、中居正広が司会を務める某番組からも出演依頼が来ていた。佐藤さんがそちらではなく、『ゴロウ・デラックス』を選んだことを事前に聞いていた稲垣が、その理由を聞いたのだった。だから佐藤さんは、稲垣の出演する『ほんとにあった怖い話』を好きで見ていたと語った上で、こう明かした。
「楽にお話できるだろうなという感じがあったんですよ、吾郎さんなら。中居さんの場合はね、見ている分にはとても面白いんですけどね。ウイットがあるし当意即妙で。だけどお相手するのは疲れるだろうなと思うんですよ」
答えを聞いた稲垣は「あ~。その通り」とカメラ目線で満面の笑み。「この歳になると疲れるというのは嫌なんですよ」と言う佐藤さんに、「ぼくは癒しますので。なるべく」と真顔で返した。
まじめで知られる稲垣は、本気で佐藤さんを癒そうと思ったのだろう。佐藤さんが小説『晩鐘』を書いて一度は断筆を宣言したが、何もすることのない毎日にうつ病のようになったこと。しかし、女性セブンでの連載を執筆するために再び筆を執ったことで元気を取り戻したという話をすると、「それでみなさんもこの本で元気になられたわけですから!」と力強く語った稲垣。
それに対して佐藤さんが「なんで元気になるのかよくわからないですけどね、私には」と言えば、稲垣は「元気になりますよ!」とピシャリ。これには佐藤さんは「それについてはまた改めて激論を戦わしたい」とユーモアあふれる言葉を返した。
番組では、佐藤さんが長年にわたる執筆のため、ひどい腱鞘炎になり手術したことも明かされた。実は連載を始める上で、ネックになったことの1つが腱鞘炎だった。『晩鐘』を書き終えた佐藤さんの指は、もう限界に達していた。日常生活を送る限りはやがて痛みも引いていくが、新たに連載を始めるとなれば、痛みが増すことは目に見えている。このまま断筆するか、それとも手術をするか──佐藤さんは迷った末に手術を選んだ。そして生まれたのがこの『九十歳。何がめでたい』。佐藤さんが本書の「おしまいの言葉」で書いた《「のんびりしよう」なんて考えてはダメ》という言葉にはその迫力と重みがある。