治療対象は、様々な閉塞性動脈硬化症の治療を行なっても効果がない20~79歳で、血管機能検査ABIが0.7未満、間欠性跛行(かんけつせいはこう)が200メートル以下の患者である。ABIというのは、両手両足4か所同時に血圧を測り比較する検査で、動脈硬化の程度がわかる。
治療は、患者の胸などの静脈に血液を体外に出す口と、戻ってくる口を留置し、シャントを作り、血液をポンプで還流させる。1分間に60~80ccを吸着材の入った血液浄化器に通し、約4リットルの血液を浄化する。時間にして2、3時間を要する。これを3か月間に10回行なう。
「血液浄化療法で、炎症系や凝固系成分、あるいは酸化してより質が悪くなった酸化LDLを取り除くことができます。これらが血管内皮細胞機能を障害しているため、取り除くことにより、血管内皮細胞が活性化されて機能が回復します。この働きによって症状が改善していくと考えています」(田村主任教授)
治療に使用する吸着装置は、大学との産学連携契約で、メーカーから無償提供されている。そのおかげで先進医療にかかる治療費の自己負担額は、10回で約13万4000円だ。本来の負担額の10分の1程度に抑えられている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年12月16日号