最近、人気の「ふるさと納税」だが、返礼品が豪華な自治体だけが効果をあげているといわれている。しかし、実際には返礼品だけでなく、税金をどのようにつかうかが継続的な納税につながっているようだ。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、北海道上士幌町のふるさと納税の話から、税金にとって必要なものを考えた。
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先日、北海道の十勝地方の20近くの町村長たちの会に呼ばれた。地域包括ケアシステムの話をしに行った。そこで、上士幌町のふるさと納税の話を聞いた。
上士幌の竹中貢町長によると、「十勝ナイタイ和牛」や牧場直送の「ジェラートセット」などの返礼品がテレビで取り上げられ、話題となった。人口5000人弱、財政が厳しい上士幌町に、ふるさと納税する人が増え、恵みの雨となった。ここまではよくある成功例だが、上士幌町の場合はここからがよかった。そのお金を有効に使いたいということで、使用目的を指定していないものは、「子育て少子化対策夢基金」で活用することにした。
認定こども園「ほろん」を開設し、0歳児から受け入れ、利用料を無料にした。給食も無料にした。これは、働きたいという子育て中の母親の味方になった。それまでパートの求人がなかなか補充できなかったが、若い母親たちが子どもを預けてパートで働くようになった。
小学校は1クラス15人程度の少人数制にした。子どもたちの学力、体力のレベルアップを目指した。学力テストの成績も上がった。幼児教育では、外国人による文化や英語の教育も取り入れた。
こうした取り組みを、再びマスコミが取り上げると、ふるさと納税をする人が爆発的に増えた。なんと年間7万5000人、15億円を超すようになったのだ。住民税6億円弱の上士幌町に、である。
その効果で、住民も24人増えた。若い女性が移住してきたのだ。北海道では都市部でも人口減が起きているなかで快挙といっていい。認定こども園に通園する子どもの数も、100人から140人に増えた。しかし、まだ雇用の需給バランスは悪く、60人ほど人手が足りない。特に、医療や介護のスタッフは不足している。竹中町長は、「もっと移住者が増えてほしい。人が増えれば、ますます魅力的な町になっていく。ふるさと納税は、町づくりのきっかけになった」と言う。