「あまりにもあまりにもあまりにも濃く、哀しいけど温かくて、えぐられるけど包まれる、言葉を失うほど心を掴まれた時間でした」(土屋太鳳)
「もし自分だったら、と置き換えるとあんなに大きな愛で家族を包み込むことなんてできるのだろうか。。家族の絆、愛の深さを考えさせられた作品でした」(釈由美子)
「家族の事情が一つ、一つ、ひもとかれていくのですが、血ではなく、愛だと心から思えます」(たんぽぽ川村)
「こんなにも家族を愛したことがある?と、自分に周りに問いたくなった」(高見恭子)
年齢も立場も違う女性たちから絶賛の声が上がる映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が話題沸騰中だ──。脚本・監督は今作が商業映画デビューとなった中野量太さん(43才)。新人のオリジナル作品ながら、『報知映画賞』では作品賞と新人賞を受賞したほか、主演の宮沢りえ(43才)が史上初となる通算3度目の主演女優賞、杉咲花(19才)が助演女優賞を受賞するなど最多4部門に輝いた。
続く『日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞』でもりえは主演女優賞を受賞したが、彼女にとって主演映画は、数多くの映画賞を総なめにした2014年の『紙の月』以来。次にどんな作品に主演するか注目が集まっていたなか選んだのが今作だった。
「大きなチャレンジでしたが、脚本がとても面白かったので出演したいと思いました」
りえの心をこうまで沸かした物語とは、「余命2か月を宣告されたお母ちゃんと、残される家族が紡ぐ愛」という普遍的なテーマ。しかしながら、生きる力が熱く燃えたぎる。
「ステージ4の末期がん」との宣告にショックを受けながらも、お母ちゃん・双葉(りえ)は、「やらなくてはいけないことがまだある」と自分を奮い立たせる。まず家出した夫(オダギリジョー)を連れ帰り家業の銭湯を再開させるのだが、その夫と一緒にやってきたのが小学生の鮎子(伊東蒼)。夫いわく、「鮎子の母は昔一度だけ浮気した相手で、鮎子はどうも自分の娘らしい」。ぎくしゃくした雰囲気のなか、長女・安澄(杉咲)とともに4人家族としての暮らしが始まる。その安澄は気が優しすぎて学校でいじめられているが、なんとか独り立ちできるよう、厳しい態度で接する。そして、いつ体調が急変してもおかしくない状態のなか、安澄をある人に会わせようと最後の力をふりしぼる。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬ることを決意する──。
◆私のお母さんは強い人だっていうけど、本当は弱い弱い人だった
撮影は2015年6月。2014年9月、母・光子さん(享年65)をがんで亡くしたりえは、仕事と愛娘(7才)の子育てに奮闘していたが、この頃まだ気持ちの整理が完全についていなかった。しかし“宝物”もあった。『FRaU』のインタビューでこう明かしている。