余命宣告された患者の最後の砦となり、1000人以上の命を救ってきた加藤友朗さん(53才)。現在、ニューヨークを拠点に、世界的に有名な移植外科医として活躍中だ。ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』のモデルになり、現代の『ブラック・ジャック』ともいわれている。そうしたイメージから想像もつかないほど、親しみやすくて明るい。「どんな病状の患者さんが来ても絶対に“NO”とは言わない」と言う加藤さんは、患者にとって、どんな医師なのか。加藤さんと、その患者さんに話を聞いて見えてきたものは…?
加藤さんは約20年前に渡米し、現在、ニューヨークで移植外科医として働いている。2008年、世界初の多臓器体外摘出腫瘍切除手術を成功させると、『ニューヨーク・タイムズ』やCNNが大々的に報じた。加藤さんのもとには、世界中の病人たちが訪れる。今回、加藤さんに望みを託し、アメリカに渡った2組の家族に話を聞いた。
◆日本では万策尽きた10万人に1人の難病
東京都の自営業・平澤幸夫さん(66才)は、35才の頃、急に40度の高熱が出るようになった。
「2~3日すると、平熱に戻るんです。でも、突然また高熱が出る。いつも不安で仕方がなかった」(平澤さん)
医師からは、「脂肪肝だから少しやせなさい」と言われた。しかし、やせても一向に治らず、高熱が出たら病院で点滴をする。そんな日々が続いた。
「高熱が出ても、妻や子供がいるので、仕事は休めなかった。お客さんには病気のことを内緒にしていました。お客さんに迷惑はかけられませんから。病気と悟られないよう、病院を抜けて公衆電話からお客さんに連絡をして働いていました」(平澤さん)
しばらくして、平澤さんの病は、10万人に1人の難病『原発性硬化性胆管炎』と診断された。52才のとき、余命1年の宣告を受けた。当時、2人の子供は、小学3年生と中学3年生だった。
「この子たちを残して、自分はまだ死ぬわけにはいかない…」(平澤さん)