かつて「役得年金」と批判され、重複加入が可能だった「議員年金」を復活させようという動きが活発になっている。「国民年金だけでは老後の生活ができない」「地方議員のなり手がいなくなる」など、勝手な理由が並んでいる。現在、各地の市議会や県議会が声高に要求しているのが、議員の「厚生年金」加入だ。
全国都道府県議会議長会総務部の担当者はこういう。
「議長会は議員年金の復活を要求しているわけではありません。知事も市長も厚生年金。あまり都庁に出勤していなかった某元東京都知事だって特別職公務員として公務員共済年金(現在は厚生年金に統合)に加入できていたんですよ。同じように選挙で選ばれる県会議員が加入できないのはおかしい。だから国会に法整備を求めている。地方議員はイメージが悪いから厚生年金に入れないというのは差別でしかない」
うっかり“議員の厚生年金加入くらい認めてもいいじゃないか”と考えると罠にはまる。実はこれが特権議員年金の復活につながる道なのだ。
廃止されたかつての「地方議員年金」は、議員が支払う掛け金が6割、税金4割で運営され、議員の負担の方が大きい仕組みだった。しかし、厚生年金の保険料は労使折半だ。議員は政党の職員でも、自治体の職員でもない。厚生年金加入を求めるのならせめて保険料を全額自分で払うというのが筋だろう。
そうではなかった。
「議員は自治体の住民に雇われているようなもの、当然、保険料の半分は税金で負担するべき」(同前)
厚生年金加入のついでに、年金保険料の5割を税金で払わせようというのが議長会側の主張だ。これが実現すると、かつての税金4割負担以上のおいしい“議員年金”ができあがるという筋書きである。議員や公務員の特権を追及してきたジャーナリストの若林亜紀氏が指摘する。
「日本の地方議会は平均年間80日間程度しか開かれていない。兼業者も多く、フルタイムで行政の仕事をしている公務員とは勤務形態が違う。しかも、議員はいわば個人事業主でサラリーマンのように誰かに管理されることがなく、たとえ議会に1日も出席しなくても高額な報酬が全額もらえる。
独立性ゆえ特権が与えられているのに、“年金だけはサラリーマンや公務員などの被雇用者並み”などと主張するのは虫がよすぎる。もし、地方議員が自治体と雇用契約を結んで厚生年金に加入すれば、首長の部下ということになり、知事や市長の行政をチェックするという議員本来の務めを果たせなくなる。自己否定も甚だしい」