芸能界、とくに役者の世界には「2世」が多い。歌舞伎などの伝統芸能はそもそもが世襲。数百年にもわたって脈々と「芸」が受け継がれてきた。
子供はその「家」に生まれた瞬間から、将来は名跡を継ぐことが運命づけられ、幼い頃から稽古をつけられる。そうした環境のなかで育てば芸が磨かれるのは当然で、「遺伝」が役者としての才能を決めるかどうかを見極めるのは難しい。
だが、一方には三國連太郎と佐藤浩市(56才)や、市川猿翁と香川照之(51才)のように事情があって親子が別々に暮らしてきたケースもある。
佐藤は三國の3番目の妻の長男として生まれたが、小学6年の時に両親が離婚。佐藤は三國と離れて暮らし、佐藤が役者の道を志すことを決めてからも、三國は息子を手助けすることは一切なく、佐藤は自らオーディションを受けて回り、徐々に頭角を現した。
市川猿翁は猿之助だった1965年2月に女優・浜木綿子と結婚、同年12月に香川が誕生した。ところが結婚から2年もしないうちに猿之助は家を飛び出し、後に妻となる日本舞踊藤間流紫派家元・藤間紫さんのもとへ。以来、香川は、成人するまで父親と会うことがなかった。
しかし、2003年に親子は和解。香川は歌舞伎界に入り、9代目市川中車を襲名した。
「役者としての香川はまさに天才だが、決まり事や幼い頃からの訓練が必要な歌舞伎の演技では苦戦しているようだ」(歌舞伎関係者)
という評価もあるが、香川が役者としての才能に恵まれていることはたしかだろう。役者としての能力はさまざまで、一概にはいえないが、役柄や物語の世界観を理解するための「論理的推論能力」は68%が遺伝し、舞台の上で自分がどう動いているかを把握するための「空間認識」も70%が遺伝の影響を受けるという。