新聞各紙で「現職総理で初」と報じられた安倍晋三首相の真珠湾訪問は、65年前に吉田茂・首相が講和条約締結の帰路ハワイを訪問していた歴史的事実が発掘され新聞が訂正記事を出す騒ぎになった。この騒動に菅義偉・官房長官は〈日本の現職首相が真珠湾のアリゾナ記念館で慰霊に臨むのは初めての機会だ〉という政府の公式見解を発表したが、実はそのアリゾナ記念館にも、約30年前、時の竹下登・首相が極秘に訪れていたという新証言がある。
「オアフの軍用空港に降りられることになった。これから真珠湾に行く」
政府特別機の機内で、竹下首相が緊張した口ぶりでそう語ったことを、現在は政界を引退した同行議員の一人はよく覚えているという。
1988年6月、竹下首相がカナダのトロントサミットに出席した帰路だった。当時はまだ政府専用機が導入されておらず、首相一行は日本航空の特別チャーター便DC-10でカナダと米国を訪問。日本への帰路、ハワイに立ち寄った。
「降り立ったのは殺風景な場所で、すぐ近くにある海軍の司令部を表敬訪問した。それから竹下さんたちとアリゾナ記念館に渡りました。コンクリートの白い大きな柱が何本も立っていて、展示品などはほとんどないシンプルな場所。近くに戦艦の姿を見た記憶はありません」(同行議員)
アリゾナ記念館は日本軍の真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナの真上に浮かぶ。現在、すぐ側の海上には日本の降伏文書調印式が行なわれた戦艦ミズーリが記念館として保存されているが、確かに1988年当時はまだミズーリ記念館はなかった。