マッサンの「ニッカ」、とと姉ちゃんの「暮らしの手帖」など、モチーフとなった企業は広く知られていて親しみ深いです。そこで今はなき、『プロジェクトX』ファンだったオヤジ世代は、このプチ偉人伝話で溜飲を下げ、家族に説明をして威厳を保てるというものです。
『べっぴんさん』の一族の坂東営業部は、「佐々木営業部」というレナウンの前身企業でした。レナウンの名前は、イギリスの軍艦から拝借。同様にダーバンも…といろいろ講釈を垂れることができます。現在、阪急百貨店に出店していますが、その後はさらにとんでもない所から、オーダーが来るのですが…、それは見てのお楽しみ。どうです、新たな展開が気になるでしょう? このように、オヤジたちが過去を調べて、勝手にドラマの宣伝をしてくれるのですから、NHKも大助かりです。
●イケメン俳優を揃えて若い女性を虜に
最近の朝ドラは、新人女優よりも、新人俳優の方が目立ち、新人の登竜門的な役割を果たしています。そこで、朝ドラに縁遠い若い女性が、こぞって見ることになります。イケメンは、その昔、戦隊ヒーローものから数多く出ましたが、今は朝ドラです。高良健吾、永山絢斗、平岡祐太、松下優也といった若手俳優は、非常に分かりやすいイケメンです。ここで注目を浴びれば、民放でブレークし、また大河ドラマなどで大役を得ることもできます。
●コスプレとしてファッションを楽しむ
シニア世代は『青い山脈』や『陽の当たる坂道』などの石坂洋次郎作品で青春を謳歌していました。そんな昭和30年代ファッションを身にまとった、清楚なお嬢様姿がたまらないです。吉永小百合さんの若いころを思い出すのでしょうか。
一方オヤジ世代の理想のお姉さんは『巨人の星』の星飛雄馬の姉、星明子か、『あしたのジョー』に出ていた白木葉子でした。でもどちらも極端すぎるキャラです。ほどほどがいい。その点、坂東すみれ役の芳根京子は、せっけんの香りのする、理想の女性に映ります。ブラウスやカーディガンが似合う女性って、なかなかいません。その雰囲気にオヤジ世代は、胸キュンしているのかもしれません。
同様に、イケメン俳優が三つ揃えのスーツを着るのも、今流行りの執事カフェの世界観を想像させ、これまたドキドキです。今は池袋などに、スーツ姿の男性が若い女性をエスコートする「執事喫茶」が大量発生中です。ホストクラブを健全にしたものと理解すればよろしいのかと。そういえば、イケメン俳優陣のなかには元ホストがいるという噂も…。さすがに朝ドラでホストは描けませんが、元ホストや執事ならOK、そんな状況でしょうか。
どうです、近代を描く朝ドラは捉え方は十人十色、それぞれの世代のリクエストをちゃんと満たしていることが、地味にスゴイです。ちなみに朝ドラの後期(10月から)は、大阪放送局で制作をしています。そういう意味では、最近、大阪が頑張っている感が非常にしています。一時は大阪制作不要論もあって、苦労している時代もありました。
そしてNHK大阪放送局の、命運がかかっている大作が、来年下期の『わろてんか』です。なにしろ吉本興業の創業者「吉本せい」がモデルですから。これをハズしたら、関西の経済や文化は失速します。そういう意味でも、『べっぴんさん』は、ほどほどの人気でよろしおます…と思っているのかなと。だいぶ先ですが、次回の大阪制作、大いに期待しましょう。