彼と別れてフランス人と付き合い始めたものの、遠距離ということもあり、長続きはしませんでした。「恋愛感情の賞味期限は3年」って言われますよね。科学的根拠は知りませんが、私に限って言えばこれは正解(笑)。「結婚したいなら白馬の王子さまを求めちゃいけない」「いい歳なんだから現実を見なよ」などと友人に諭されるようにもなりました。でも、トキめきを捨ててまで結婚を選ぶという選択肢は私にはなかった。40歳を迎えたとき、私は結婚にこだわらず、恋に生きればいい、そういう人生もあると腹をくくったのです。
■人には、口に出せない本音もある
そんな私が43歳で結婚したのは、ひとえに家族が欲しかったから。私には家族が必要だということに気付かせてくれたのは父でした。父が亡くなったのです。
いつまでも親が生きていると思っていたわけではないのだけれど、ずっと父と二人暮らしでしたから、父がいるのは当然だし、空気のような存在だったんですね。恋だ、トキメキだと、いつまでも夢を見ていられたのは、父の愛情があったから、最愛の家族がいたからだったと、思い知りました。
葬儀を終えたとき、父の妹である叔母ちゃんがポツリと言ったんです。「兄は桜子ちゃんの花嫁姿を見るのを楽しみにしてたよ。いくつになってもいい、桜子もいつかは結婚するだろうからって」。ああ、人には、口に出せない本音もあるんだなと、胸が詰まって。
とはいえ、急に結婚したくなったらといって、40を過ぎた女に上手いこと相手が現れてくれるはずもありません。だから婚活を始め、パーティーに行きまくりました。ただこれまで、トキめくかどうかの一点で男性を見てきた私にとって、「家族」という視点で人を見ることがどうもできないんですね。父親に代わる人なんていないのだから当然なのですが、パーティーに行くたびに落ち込んで、凹みました。人生で一番しんどかった時期ですね。
どうしたらこの暗闇を抜け出せるのか、自分なりに考えました。私は家族として仲良く、信頼し、助け合える人を欲している。そういう人はどこにいるんだろうと。ふと、フランスでの同窓会を思い出したんです。つまり、これから新たに出会う人よりも、長い付き合いの人のほうが、より家族的感情を抱けるのではないかと。