経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、再逮捕されるも釈放されたASKAの深層心理を読み解く。
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覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されていたASKAが、不起訴処分となって釈放された。尿鑑定で覚醒剤の陽性反応が出た液体が、本人の尿であると立証できず、東京地検は容疑不十分と判断。逮捕前から無実を主張していたASKAは、釈放されると、すぐに「無罪です。すべての行動には理由があります」と意味深な言葉をブログにつづり、翌日には尿と偽ってお茶にすりかえたことを公表した。
検尿で警察をあざむいたことになるが、湾岸警察署を釈放された時、ASKAは確かに、自分が嘘をついたというサインを仕草で見せていた。
黒のパンツに黒のVネックのシャツ、グレーのジャケットをはおったASKAが、湾岸警察署の玄関に姿を現す。2人の警察官に付きそわれてガラス扉を出てくると、待ちかまえていた報道陣を見て一度小さく頷き、口元に笑みを浮かべながら軽く頭を下げた…ように見えた。
しかし、この時のASKAの表情や仕草をスナップショット的によく見てみると──。
・ジャケットの前のボタンを2つとも留めている。
・唇をきっちりと固く閉じたまま、左側の口元にだけ笑みを浮かべている。
・顔がうつむきかげんになり、やや斜め横を向いている。
・視線が横目使いになっている。
・眉がわずかに上がっている。
・ポケットに手を入れている。
これらの仕草を総合すると、私は何かを隠している、嘘をついている、というメッセージと読み取ることができる。
相手をだまそう、あざむこうとする時、人が隠そうとするのは真実と、その時に生じるだろう感情だ。不安感や罪悪感を感じながら「隠したい」、「隠さなければ」と嘘をつくこともあれば、「一杯食わせてやろう」、「だましてやろう」と嘘をつくこともある。だが、どちらの場合にしろ、嘘をつこうとすると、それは仕草となって表れるものだ。
まず、ASKAはジャケットのボタンをきちんと留めていた。報道陣の前に出て写真を撮られるのだから当たり前、と思うだろうが、ここにも意味はある。ジャケットのすべてのボタンをきちんと留めるというのは、内面を見せたくない、寄せ付けたくないという心理の表れ。逮捕前の報道に、「マスコミのフライング」とブログに書き込んでいたことからも、本人だけが知る真実とは異なる報道が流れることを、歯がゆく思っていたのだろう。
ASKAが見せた笑みも、嘘をついている根拠の1つだ。唇をまっすぐに結んで歯を隠した笑みは、秘密がある時に出やすいもの。意識して作った偽りの笑みの場合、笑顔は顔の下半分だけに表れやすく、目元が緩むことも目が笑うこともないのだ。
さらにASKAは、左側の口元だけを歪めた。なんとも不敵な笑みではないか。