アイドルが得意とするSNSの使い方と言えば、研究し尽くした角度と光のあて方を駆使して撮った「自撮り」写真の配信です。また、動画撮影には構成力が必要で、制作のプロがつくったものでないと、見る側も面白がってくれないと言われてきました。ところが、スマートフォンで気軽に動画を撮影し、タテのまま動画を楽しむ習慣が広がったことで事情が変わりつつあります。地下アイドルでライターの姫乃たまさんが、アイドルとタテ動画の関係についてリポートします。
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ピコ太郎の『PPAP』が世界的に流行するなど、2016年もYouTubeのコンテンツが人気でしたが、今年はAbemaTVやLINE LIVEなど、スマートフォンで動画を視聴できるアプリケーションが次々に登場しました。さらに、それに伴って、スマートフォンでの視聴に最適化した”タテ動画”の配信が増えています。
周囲のアイドルさん達が番組出演しているのを横目に、まったくお声がかからなかった地下アイドルの私が、今年のネット動画事情について振り返ってみました。
■2016年は動画が身近なコンテンツになった年
声優の茅野愛衣さんが日本酒を飲む番組、『かやのみ』をYouTubeで配信しているプロデューサーの長谷憲さんは、「動画が気軽で身近なコンテンツになった」と話しています。
「動画はいつでもスマートフォンで視聴できますし、アプリケーションを使えば、配信も編集も簡単にできます。最近ではYouTubeのメニューにも動画の編集機能があるんですよ」
先日、コンビニのおでんを指でつつく男性の動画が話題になりましたが、これまでアルバイト店員が店舗の冷蔵庫に入ったり、学生が醤油差しを鼻にいれたりしたことで起きた炎上は、ツイッターに投稿された画像がきっかけでした。動画の配信は今年、おでんツンツン男のような人にもできるほど簡単になっていたのです。
しかし、編集が簡単になったとはいえ、未経験の人が『かやのみ』のような番組を編集するには、まだ制作費や技術が必要だと言います。そのため、今は生配信や編集しない動画が流行しているそうです。
「以前は番組制作というと、テレビ番組のように編集しなければならない感覚がありましたが、最近は視聴者側にも、プロじゃない人が作った動画をみる文化が根付いています。『かやのみ』も、きちんと編集はしていますが、テレビとは違うホームビデオのような自由さを大事にしています」と、長谷さんは話してくれました。
動画は、映し出された出来事を身近に感じられるように求められた結果、身近なコンテンツになっていったようです。