『君の名は。』、『聲の形』、『この世界の片隅に』と、アニメ映画の大ヒット作品が続いた。これらのヒットをきっかけにして、アニメーションは大人が見ても楽しめる作品のひとつとして注目され、それぞれの作品の監督にも注目が集まった。気づけば、アニメ映画の劇場公開数はかなりの数にのぼり、そのなかから大人も楽しめる作品を探すのは、なれない人には難しい。そこで2017年注目の作品をアニメ評論家の藤津亮太さんにきいたところ「来年、後半に公開予定の映画はまだ発表されてないので、前半のものに限りますが」との条件つきで、作風がはっきりしていて、大人も楽しめる5作品をあげてもらった。
●『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』 3月18日(土)公開
ヒロインの女子高生・森川ココネの唯一の特技は昼寝。2020年東京五輪が開幕する3日前、窮地に陥った父を救う旅に出る。そこで体験する旅は、昼寝で見る夢と現実が入り交じった不思議なものだった。ヒロインを高畑充希が演じることでも注目を集めている。『東のエデン』『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治が監督、脚本、原作を兼ねている。
「これまで世界の危機を救うようなハードな題材ばかりを続けて取り上げてきた神山監督が、初めて普通の女の子の個人的な体験を描きます。SFやハイファンタジーの世界でありながら、地に足がついた人間のリアルを描くことに定評がある監督が、今回は普通の女の子の日常をベースにファンタジーの世界を描くため、SFやアクションが苦手な人でも入り込みやすい。今までとは逆の視点から描写されるので、神山監督の新しい魅力が発見できる作品になりそうです」(藤津さん)
●『夜は短し歩けよ乙女』 4月7日(金)公開
先日、第156回直木三十五賞にノミネートされた作家・森見登美彦の小説が原作。同作品書籍のカバー絵を担当したイラストレーター・中村佑介がキャラクター原案をつとめ、同じく中村がCDジャケットを担当しているASIAN KUNG-FU GENERATIONが音楽を担当。監督は湯浅政明、脚本は劇団ヨーロッパ企画主宰の上田誠が担当する。星野源が、友達が少なく片想いに振り回される、主人公の大学生の声を担当することでも話題だ。
「2010年にも同じ森見作品『四畳半神話体系』がテレビアニメ化されていますが、監督や脚本などがそのときと同じ座組みです。湯浅監督は、そのビジュアル・イメージが印象的で定評があり、美術の専門家やアートへの関心が高い人からの支持が高い演出をします。それでいて、森見作品に独特のコメディ要素はしっかり生かされるはずなので、監督のセンスを楽しみながら笑える娯楽映画になるはずです」(藤津さん)