近年、「性格」と「長寿」の相関関係を巡っては、世界中で数多くの研究成果が報告されている。
中でも画期的とされたのが2011年に米国で発表された「長寿プロジェクト(The Longevity Project)」である。この研究が注目されたのは、大規模な対象者集団を幼年期から晩年までの長きにわたって追いかけた「80年追跡研究」だったからだ。精神科医で岡田クリニック院長・岡田尊司氏が説明する。
「始まりは第一次世界大戦後の1921年に遡ります。スタンフォード大学の心理学者、ルイス・ターマン教授が10歳前後の児童1528人を対象に性格や成育環境に関するデータを集め、その後30年にわたり彼らと面談を重ねていました。
この調査は1956年にターマン氏が79歳で死去すると中断しますが、30年以上経ってからカリフォルニア大学の長寿学者ハワード・フリードマン教授が残されていた資料に着目し、70歳前後になっていた対象者を改めて訪ねて調査を再開したのです」
フリードマン氏は生存者の健康状態や死亡者の死亡診断書を調べ、ターマン氏の記録にあった対象者の性格などとの相関関係を統計的に分析した。
疫学研究の領域で、このような大規模かつ長期の研究が行なわれたのは世界で初めてだったため、大きな話題を呼んだのだ。