日本経済はバブル崩壊以来、「円高」「株安」「地価下落」の三重苦で企業の実力が発揮できなかった。それがトランプ効果を機に「円安」「株高」「地価上昇」へと反転し、マクロ経済の環境に大きな変化をもたらすことになる。
その第一が為替レートだ。現在の1ドル=110円台は円安の始まりに過ぎない。
為替レートと経済競争力の研究で知られ、近著『国際競争力』(文眞堂刊)で円安は輸出企業だけでなく内需型企業にもメリットが大きいことを指摘した松本和幸・帝京大学経済学部教授が語る。
「長期的に見れば、日本円は主要国の通貨の中で最も大幅に切り上がっています。
わかりやすく競合国の現在の通貨水準を円で説明すると、ドイツは1ドル=150円ほどの水準。韓国ウォンは今も1ドル=200円くらいの水準にある。サムスンが日本の電機メーカーに勝ったのは技術力というより、単純にウォン安だったからです。
日米の国際競争力を均衡させる為替レートを考えると、1ドル=120円でもまだ高すぎる。ドイツ並みの1ドル=150円くらいで釣り合う計算です」
仮に1ドル=150円まで進めばトヨタの利益がさらに1兆2000億円以上増えるのをはじめ、日本の上場企業全体の利益は5兆円以上増える。それに向かえば株価は沸騰する。
次にやってくるのが地価上昇だ。マーケットバンク代表の岡山憲史氏はこう見る。
「減税や公共事業というトランプの政策は米国の内需を高め、景気をさらによくする。儲かった米国企業から見ると、ドル高・円安によって日本市場は非常に割安になっている。そこで技術力のある日本企業へのM&Aが増え、五輪を控えて日本の不動産もどんどん買われるでしょう。とくに日本は株に比べて不動産価格の上昇が鈍い。トランプバブルによる米国資金は日本の地価上昇の起爆剤になる」