その店は東京・銀座7丁目、雑居ビルの3階にあった。“熟成寿司”でグルメ雑誌やテレビ番組にひっぱりだこの『鮨處やまだ』だ。
店主の山田裕介さんが、カップ麺を食す時――。それは、最後のお客さんを送り出し、片付けと翌日の仕込みを終えた午前3時のこと。小腹を満たしたい時、カップ麺をささっと食べて気持ちを切り替えるという。
「私は元々、青森の大工でした。現場では冷たい弁当ばかり。だから、お湯を注いだ熱々の麺がありがたかった」(山田さん)
物作りの舞台は変わっても、カップ麺はいつもそばにある。そして今夜も大好きな麺をすするのだった。
「午前3時は今日と明日の境界線。麺を食べながら1日がリセットされて、思考が翌日のモードに切り替わるんです」(山田さん)
青森・中泊町で育った山田さんは、漁師だった父親の影響もあり、前職の大工から寿司職人に転身。幼少期に食べたしょうゆ味のカップヌードルは体に馴染んだ味だが、新作の牛テールスープ味もお気に入りだ。
「スープにコクがあってさすが王道の安定感があります。牛骨だしの芳潤な甘みが感じられつつ、すっきり食べやすい。複雑な味だが、さすが王者カップヌードル、まとまり感がいい。しめたさよりみたいなさっぱり系のあとに食べたいですね」(山田さん)
眼鏡を湯気で曇らせながら、実にうまそうに麺をすする。カップの麺そのものが好きだという山田さん。特にマルちゃん正麺のつるりとしたのど越しが好みだ。
さらに、山田さんが注目しているカップラーメンを紹介してもらった。『ニュータッチ 凄麺15周年記念京都背脂醤油味』についてはこう語る。
「レトルトのチャーシューが見た目に迫力あるし実際に美味い。旨みのあるスープとノンフライ麺は夜中のラーメンにちょうどいい。寿司を合わせるならあっさりしたひらめが合うかな」(山田さん)