94歳にして月8回は舞台に立つ漫才師・内海桂子。記者が取材に訪れた浅草「東洋館」の12月上席の舞台でも、三味線を抱えて登場し、観客を巻き込んだアドリブの連続。爆笑の渦を巻き起こしていた。なぜ、いまも「現役」でいることをやめないのか、内海が語った。
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お客さんにお金をいただいて舞台に立つ以上は、94歳の素人のおばあさんの形をしてちゃダメなんですよ。杖なんかついてちゃいけない。芸人としてシャキッとしてないと。舞台に上がれば、セリフだってスラスラ出てくるんだから。
だけど別に若ぶってなんかいないですよ。90歳になったら90歳の芸もあるんです。「酒は1合、ご飯は2膳、夜中に3回のお手洗い……と思ったら、5回行っちゃった」ってやるんだけど、歳とったことがネタになっちゃう。ありがたいことですよ。それにしても、どうして歳を取ると体から水分が出やすくなるのかしらねぇ(笑い)。
長生きの秘訣とかは考えたことがない。若い頃から苦労してきたから、好き嫌いなんて生意気なことはいいませんよ。
9歳の時に神田の老舗のそば屋に奉公に出されて、お坊ちゃんの子守役。働きながら「生きていくためには何か芸を身につけておかないと」と思って、1日10銭で踊りと三味線をお師匠さんのところに習いに行ったんです。そうやって覚えたものが90過ぎても役に立ってるんだから、「よくやった」と若い頃の自分を褒めてやりたいね。
そりゃ昔の苦労話をすればいくらでもありますよ。師匠に話を教えてほしければ赤ん坊の世話をしたり、掃除をしたりして、その師匠の家の中に入らないといけなかった。苦労するから必死で話を覚えようとする。ところが、今はそんな修行をさせませんから、今の子たちはかわいそうといえばかわいそうですよね。