「高齢者の定義を65歳から75歳以上に引き上げてはどうか」──2つの学会に提言が年明けから大きなニュースになっている。呼び名を考えるのはお年寄りだけでいいのだろうか。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が女性の呼び名について考える。
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「高齢者の定義を今の65歳以上から、75歳以上にしよう」──。年明け早々の5日、日本老年学会と日本老年医学会が、そんな提言を発表しました。60代後半から70代の生物学的に見た年齢や知的機能が、10~20年前に比べて大幅に若返っているのが根拠だとか。その上で、65歳~74歳は「高齢者の準備期間」に当たる「准高齢者」と位置づけました。
現在でも医療制度の分野では、65~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と分類しています。どう呼ばれようが加齢の宿命からは逃れられませんが、もしかしたら当事者にとっては、「前期高齢者」より「准高齢者」のほうが嬉しいのでしょうか。そんな老人心裡につけ込んで、年金の支給開始年齢を遅らせたりいつまでも働かせようとしたりする思惑があるのでは……といった批判も巻き起こっています。
呼ばれ方に敏感なのは「高齢者」だけではありません。2017年を大人として楽しく力強く平和に生きていくために、年齢が気になるお年頃の女性に対する呼び方について、あらためて考えてみましょう。呼び方ひとつで、白い目を向けられることもあれば、たちまち熱いまなざしを向けられることもありそうです。
教養があると自負している人が陥りやすいのが、「姥桜」の落とし穴。花の盛りに葉がない桜と歯のない姥をかけたもので、もともとはお歳を召していてもなお艶めかしさたっぷりの女性を指す「ホメ言葉」でした。しかし、最近では「姥」の意味合いが強くなり、いい歳して派手に若作りをしている女性のことを指す「悪口」になっています。本来はホメ言葉だという知識を振りかざしたくて、「あの人は、まさに姥桜だね」とか「○○さんの姥桜の魅力にノックアウトされました」なんて言ったら、とんでもない事態になるでしょう。