さらに、である。そもそも日本の祝日はかなり多い。日本の「国民の祝日」は、2016年に山の日(8月11日)が新設され、年間計16日になった。この日数は先進国最多といわれている。欧米は年間計10~11日の国が主流だ。
そもそも多いから、土曜と重なったっていいではないか、という乱暴な話をしたいわけではないが、では、なぜ日本は祝日だらけなのだろう。その有力な説に「有給消化の少なさをカバーするため」というものがある。
たしかに、日本の有給消化率は低い。エクスペディアという世界最大の旅行予約サイトの会社が実施した調査では、2016年の日本の有休消化率は50%で、世界28か国中最下位だ。最下位常連国の韓国の53%を下回った。ブラジル、フランス、スペインオーストリア、香港あたりは100%である。
どうして日本の会社員は有給をとらないのか。よく言われているのが、「職場の空気がそれを許さない」という同調圧力の強さだ。それはその通りなのだろう。ただ、エクスペディアの調査では、「休み不足と感じている人の割合」も出していて、日本は34%しかない。これもまた最下位なのである。同調圧力で嫌々、というよりも、「ま、このくらい働いてもいいんじゃね」くらいに受けとめている層の厚さがイメージできる。
また、同調査で「休みをとらない理由」の1位は「人手不足」だ。2位の「職場の同僚が休んでいない」よりも毎年、多い。有給を満足に取っていたら仕事がまわらない現実があるのだ。
よく日本の労働生産性は低いと言われる。カイゼンに励む自動車工場労働者をはじめ、ブルーワーカーの生産性の向上は徹底している。比して、ホワイトカラーがだらだら残業をやっていてダメダメというお決まりの批判だ。
でも、どうなのだろう。ノー残業デーなどを実施しても、結局、家に持ち帰る仕事が増えるばかりというのが一般的ではないか。ただでさえ、人手が足りなくてせわしないのだから、労働時間は減らしたくても減らせないんだよ、という現場からの声も実は多いのではないか。
それに、日本の場合、労働生産性の低い医療・福祉分野にさらなる人員を割かざるをえず、これから力を入れていこうという観光だって決して労働生産性は高くない。少ない人手でぼろ儲けできる金融分野は苦手だし、巨大な富と直結しているエネルギー関連産業は、そもそも資源のない国なので弱い。
そんなこんな考えると、実は、「祝日休みは減らしたほうがいい」と思っている人もホワイトカラーを中心に多そうな気がする。高度成長期からバブルにかけての勢いが異常だったのであり、もともと日本はさして豊かではなく、かつ貧富の格差が小さ目な国だ。だから、みんなで汗して働かねばならない。残念だが、欧米並みに休んでいられない、と実は大半が悟っているのではないか。
ただし、過労死するほど自分を酷使しては絶対ダメである。倒れない程度目一杯いっぱい働けたらいいね、 というあたりがリアルな落ち着きどころのような気がするのだが、いかがだろう。