2017年食のトレンドはなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が大胆予想をする。
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前回、元旦にUPされた「文明開化から150年目の食肉新時代 今年はジビエ元年に」という記事では国産牛の不足から来る、国内の肉事情について書いた。今回はその他の2017年の「食」にまつわるトレンドを予想していきたい。
●鶏、豚へも回帰する肉ブーム
先に挙げたように「ジビエ」の存在感は確実に増すが、何しろ相手はジビエ──野生鳥獣であり、安定した供給が見込めるわけでもなければ、急激に成熟した巨大市場になるわけでもない。大勢で言えば、牛肉以外の肉へのシフトは鶏や豚に流れるだろう。
昨年10月、この連載でも「焼鳥店に大手外食チェーンが続々進出している理由」という原稿を書いたが、飲食店における鶏肉や豚肉メニューの充実や専門業態の開発が進んでいる。特に年初は酉年にひっかけて、鶏メニューを前面に前面に押し出す飲食店の増加が見込まれる……というか、すでに年初から何軒か見かけている。
●飲食店の総ローカルチェーン化
近年、飲食店で目立つのが地域を限定した数店舗のローカルチェーンだ。本社機能を最小に抑えながら、規模の拡大とクオリティ担保を実現している。近いエリアに出店することで、人員の融通や素材の効率化など一石数鳥のいいとこ取り。ただしこの背景には、原価の上昇などもあり、席数の少ない店舗単体で利益を上げるのが難しくなってきているという時代背景も。客の意識が「コスパ至上主義」から変わる日は来るのだろうか。
●ハイクオリティラーメン
レストランガイドブックの金字塔「ミシュラン」の評価指標は従来型の星の数での評価のほか、5000円以下の飲食店を対象とした「ビブグルマン」という評価指標もある。2015版にラーメンカテゴリーが新設され、ビブグルマンに22店舗が掲載。翌年版の2016に東京・巣鴨の「Japanese Soba Noodles 蔦」が星を獲得し、2017にも大塚の「創作麺工房 鳴龍(NAKIRYU)」が星を取った。重層的でありながらキレのある澄んだ醤油スープに低温調理のチャーシューを乗せた、新しい佇まい。もはやラーメンは「安ウマ」「ジャンク」というくくりで語れなくなってきている。
埼玉・川島町の「中華そば四つ葉」、東京・調布の「しば田」、東京・東長崎の「カネキッチンヌードル」などの行列店が提供するハイクオリティラーメンの勢いがさらに加速する。
●ラスト築地巡礼ブーム
昨年、豊洲に移転するはずだった築地市場。10月に公開された映画「TSUKIJI WONDERLAND」は本来、豊洲移転を前提とした未来志向の記録映画だったが、移転は延期に。映画やその他のメディアの報道で初めて築地の内側を知り、「最後の築地」に触れようという駆け込み巡礼者が増加する。