新年早々、“トランプ砲”の標的になり、業績への悪影響が懸念されている日本の自動車メーカー。
2019年の稼働を目指して北米メキシコに新工場を建設中のトヨタ自動車に対し、トランプ次期米大統領が自身のツイッターで噛みついたことが事の発端だ。「ありえない! アメリカ国内に工場を作らないなら高い関税を払え」と、工場新設の撤回を求めた。
大統領選の最中から不法移民対策として、「メキシコとの国境に高い壁をつくる」との公約を掲げてきたトランプ氏。メキシコに進出する大手企業に対しては、「米国内の雇用が奪われている」と強く批判してきた。そのため、名指しされたトヨタ以外でも、ビジネス戦略の見直しを迫られる局面が来るかも……と心配する向きが広がっているのだ。
「特に巨大な米国市場を主戦場としている日本の自動車メーカーにとって、アジア並みの安い労働力で生産でき、かつ北米自由貿易協定(NAFTA)により関税面のメリットも大きいメキシコは、米国への重要な『自動車輸出基地』になっている。トランプ氏のメキシコ政策如何によっては、深刻な打撃を受けるだろう」(自動車業界紙記者)
いまのところ、米国向けの小型セダンを中心に80万台規模のメキシコ生産を手掛ける日産自動車や、2014に新工場を設立して米国販売台数の約3割をメキシコ生産に頼るマツダの両首脳は静観の構えを見せている。
〈新たな政策がどうなるのか、新しい北米のルールがどうなるのか、注意深く見る〉(カルロス・ゴーン日産社長)
〈メキシコからはアメリカだけでなくヨーロッパなど各国に車を供給していて、その戦略に変更はない〉(小飼雅道・マツダ社長)
だが、完成車メーカーとともにメキシコ進出を果たしている部品メーカーの中には、当面の生産拡大に及び腰になっているところもあるという。
そんな中、飛び込んできたのがデトロイトで開催されている北米国際自動車ショーでの豊田章男・トヨタ社長の発表だ。
新工場の建設計画は変更しないとしながらも、今後5年間で米国に100億ドル(約1兆1600億円)の投資を約束。さらに、〈米国には13万6000人の仲間(従業員)がいる〉と述べ、米国の雇用に貢献してきた実績をアピールしてみせた。
この豊田氏の対応ぶりには賛否両論が沸き起こった。