12月10日、富山市民プラザで開催された「西村雅彦コミュニケーションwith富山 芝居を創る4」。約1か月の練習を経て、小学生から80歳まで男女40人の市民が初舞台を踏んだ。
総合プロデューサーを務めたのは西村雅彦(56)。舞台は満場の拍手に包まれ、幕を閉じた。
西村は5年前から、石川、富山、千葉、福岡など、各地で初心者が参加する芝居やラジオドラマといったワークショップを開催している。西村はその目的を「特にシニア世代が、人と向き合い、繋がれる場を提供すること」だと語る。きっかけは母の言葉だった。
「もう80歳になりましたが、10年程前から『寂しくなった』と、よく口にするようになりました。『歳をとると、気を強く持っていても体が追い付かない。その辛さや寂しさが、いずれわかる』と言う。母は兄と住んでいますが、ひとり暮らしの高齢者も多い。彼らが元気になるよう僕にできることは、長年やってきた芝居しかないんです」
富山で芝居を演出するのは、今回で4度目。10人ずつ4グループに分かれ、それぞれが20~30分の劇に挑んだ。
参加者のほとんどは演技経験がない。だが、一人ひとりが魂を込めて紡ぐ声にのり、伝えたい思いがダイレクトに客席に届く。西村が演じる上で重要視するのは“伝えること”だ。
「皆さん、つい早口で言葉を渡そうとします。でも、言葉を塊でポンと伝えてしまうと重すぎて、受け取った側が理解するのに時間がかかる。ましてや、舞台では客席を置いてきぼりにしてしまう。
脚本家が言葉を丁寧に選び、セリフに落とし込んでくれているのに、申し訳ないですよね。日常でも同じことで、ゆっくりと、言葉を丁寧に伝えたほうが、誠実さや人の在り様が見えるんじゃないかな」