「出版不況と言われる最近、単行本の初版部数は著名な小説家でも1万部程度。そんななか、無名の新人が初版3万部というのは異例中の異例。いったいどんな本だと発売前から大きな話題になっています」(都内の書店員)
1月18日に扶桑社から発売予定のその本、タイトルは『夫のちんぽが入らない』である。
「こだま」のペンネームを名乗る著者は、地方在住の40代女性。元教諭で現在主婦の彼女は、自身の夫婦関係を私小説として書いた。同人誌の即売会で発表したところ、大きな反響を呼んだことから編集者の目に止まり、単行本として刊行されることになった。
とにかくインパクトがあるのは、タイトルである。担当編集者は言う。
「著者が付けたタイトルを尊重しました。社内では『真剣に売るつもりはあるのか?』『店頭に並べる書店員や本をレジに持っていく購入者の気持ちを考えたのか?』などいろいろな反対意見もありましたが、全力で己の恥をさらしにいった著者を前に『売るためにタイトルを変えましょう』とは言いたくなかった。著者が恥や恐怖と戦いながら執筆するという負担を味わったのだから、買う人たちにも『ちんぽの本』を手に取ってレジに持っていくくらいの負担をかけてもいいじゃないかと」
発売前に見本を送られた全国の書店員たちは、みな衝撃を受けた。
「最初は『なんでこんなタイトルなの?』と思いましたが、読んだらこれしかあり得ないと分かる。衝撃的なタイトルを付けたら売れるだろうというのではなく“売れなくなるかもしれないけど、このタイトルじゃなきゃダメなんだ”という思いが伝わってきて、注文数を増やしました。書店員の間では、略して『おとちん』と呼んでいます」(三省堂書店営業本部・新井見枝香氏)
こうして全国の書店員から絶大な支持を受け、初版3万部という異例の発売を迎えることになった。