憧れの俳優と一緒のドラマに出演──。そんな夢を“エキストラ“の仕事でかなえる中高年が急増中だ。もちろん収入も得られるため、楽しく稼げる仕事として、人気を集めているのだ。
エキストラ派遣会社・古賀プロダクションの古賀理紗子社長は「最近は60代以降のかたが増えています。テレビや映画にチラッとでも出ることが、家族とのコミュニケーションのきっかけになるというかたや、現場の緊張感が好きというかたもいます」と言う。
では、エキストラになるには、どうしたらいいのか。同プロでは、まずプロダクションを訪問して仕事内容の説明を受け、1100円を支払って登録する。登録後は、自分から電話で仕事の有無を確認したり、プロダクションからの連絡を受けたりして現場へおもむくことになる。経験は不問だ。
時給はまちまちだが、ドラマの場合は5時間で4000円程度が相場。現場が東京23区外なら交通費が支給されることもある。昼食も支給され、主演級が食べるのと同じロケ弁を食べられることも。
福場勍子(きょうこ)さん(73才)は、エキストラ歴8年。月に3本程度、仕事をしている。47才の息子と2人暮らしの福場さんは、「自分とは異なるキャラクターを演じることで、わが子の母親であることの呪縛から解放される。その開放感がたまらない」と言う。
最近は、酒井美紀の母親として、ベッドで息を引き取るという役を演じた。「アップで映ったので、姉から“死ぬのは早い”とメールが来ました」とうれしそうだ。
阿部三郎さん(66才)は定年退職後に始めて現在4年目。若い頃からこの世界に興味があったと言う。
「週3回ぐらいやっているから、現場でいろんな人に会えるのが面白い。エキストラには、もともといろいろな仕事をしていた人がいますが、利害関係がないからすぐ仲よくなれるんです。リタイア後に友達がいなくなったという元同僚もいるけど、ぼくの場合は増えていますよ」