3月に開催される野球の世界一決定戦・WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、小久保裕紀・監督率いる侍ジャパンが「世界一奪還」に挑む。世界一になったときのメンバーでもある、現役最年長イチロー(43、マーリンズ)は、4年前は所属していたヤンキースが出場に難色を示したため実現しなかったが、マーリンズは「球団として全力でバックアップする」と積極的だ。しかし、仮にイチローが「電撃参戦」を表明した場合、すでに外野陣が充実しているだけに、小久保ジャパンとしてはその扱いに困るとの指摘もある。
ところが結局、メジャー組のうち所属球団で主力級の働きをしている選手は、WBCへの出場が難しい事情がある。代表でプレーした年は、所属球団でのプレーにネガティブな影響が出るというデータがあるのだ。『プロ野球なんでもランキング』などの著書があるライターの広尾晃氏がいう。
「ダルビッシュ有(30、レンジャーズ)、涌井秀章(30、ロッテ)など一部の例外を除き、ほとんどの選手がWBCのあったシーズンは成績をはっきり落としています。松坂大輔(36、現ソフトバンク)などは顕著な例で、2009年以降、満足のいく投球が全くできていません」
そうしたことからMLB球団はWBCへ所属選手を派遣したがらず、逆にいえばこの4年間で控えが定位置となったイチローだからこそ、マーリンズが“どうぞ、どうぞ”と参加をむしろ奨励している状態なのだ。しかし、イチローが侍ジャパンに電撃参戦しても、今の実力ではスタメン起用が難しい。しかし、78歳の権藤博コーチ以外は監督もコーチ陣もイチローと同世代ばかり。小久保監督にイチローをベンチに座らせておく決断ができるのかという問題がある。
大会を目前にして、さまざまな懸念が囁かれるのは、小久保監督のリーダーシップを今ひとつ信じ切れないという背景もある。