日本では長く、核保有に関する議論はタブー視されてきた。しかし国際政治学者の三浦瑠麗氏は、「日本の核武装」が現実になる可能性があると指摘する。
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トランプ大統領誕生がもたらす最大のサプライズは、「日本が核を持つ日」が近づくことかもしれません。
トランプ氏は大統領選挙中、「日本、ドイツ、韓国をぜんぶ防衛することなどできない」とぶっきらぼうに発言しました。
主権国家が安全保障上の脅威を感じたら自力で手立てを講じるべきなのに、日本は米国に頼るばかりではないか合理的な頭脳を持つトランプ氏には、米国に自国の安全保障を依存する日本が理解できず、そこから「そんなに怖いなら防衛費を倍増しろ」という主張が出てきます。その延長線上でトランプ氏らから日本の核武装容認論が出てきたのです。
強調しておきたいのは、歴史を振り返れば、アメリカは戦後、ソ連、中国、フランス、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮など他国の核保有を一向に阻止できなかったということです。
ただし、同盟国だけは話が別で、韓国や台湾から核武装論が出た際、米国は協力関係を盾にして許しませんでした。日本も同様に米国の強いグリップが効いていたため、自前の核を持とうとすれば、米国の承認を得ることが不可欠でした。
一方で、日本が核兵器を持つ必然性が生じるのは、東アジアにおける米軍のプレゼンスが低下し、単独で周辺国と対峙する必要に迫られた時です。
つまり、「日米同盟の信頼感の低下により日本が核武装を迫られる」のに、「それを円滑に進めるには米国の許しが必要」という矛盾があったのです。