中国に宥和的だったオバマの退場で国際的な更なる孤立が必至な上に、不動産バブルが弾ければ経済も行き詰まる他ない。中国がもう北朝鮮を支えられないとなれば北朝鮮はすぐさま次の後ろ盾を求めて蠢き出すだろう。
朝鮮半島には事大主義(*2)のDNAが埋め込まれている。日清戦争に至るまでの李氏朝鮮は、内部で日本寄りの開化派と清国寄りの事大党が激しく争い、清国が敗北した後はロシアに事大の先を鞍替えした。その姿は、中国から北朝鮮への圧力を期待して習近平に擦り寄ったものの、中国には北朝鮮を見放すつもりがないと知るや米韓同盟重視に戻った韓国の外交姿勢に引き写されている。
【*2 強い者に追随して自己保身を図る態度や傾向のこと。特に朝鮮半島史では、朝鮮王朝の対中国従属政策をいう】
大崩壊まで至らずとも、中国が北朝鮮を支えられなくなれば、北朝鮮が新たな事大の相手先として米国に急接近する可能性は高い。(文中敬称略)
【PROFILE】むらかみ・まさとし/1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。2008年4月外務省入省後、北京大学、ロンドン大学に留学し中国情勢分析などに携わる。2012年12月~2014年11月衆議院議員。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国』(石平氏との共著、ワック刊)がある。
※SAPIO2017年2月号