駿河国(静岡県)に井伊家当主・井伊直盛の一人娘として生まれた姫君・おとわ。一度は出家したが、父・直盛が戦死し、跡を継いだ親族も殺されると、還俗して「直虎」と名乗り、井伊家の“おんな城主”として戦国の世を生き抜く覚悟を決める──。
その直虎を柴咲コウが演じるNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の時代考証を手がけた静岡大学名誉教授の小和田哲男氏が、こう明かす。
「直虎と同じ時代を生きた“おんな城主”は他にもたくさんいたといわれています」
直虎に勝るとも劣らない戦国の女傑たちを紹介していこう。
●寿桂尼(生年不詳~1568年)
『直虎』にも登場する“元祖・おんな城主”。今川義元の母で、『おんな城主 直虎』では浅丘ルリ子が演じる寿桂尼。夫・今川氏親が死んだ大永6年(1526年)から義元の兄・氏輝が独り立ちするまでの6年間、駿河・遠江両国の実質的な領主だった。
戦地に赴いたわけではないが、公家の娘で京に人脈があることを利用し、政治手腕を発揮した。
「氏輝が若くして死去したときは、その弟の義元が跡を継げるよう、京へ使いを出して室町幕府から義元の家督相続の承認を受けた。だが、これを不服として家督争いに名乗りを上げたのが、氏親の側室の子、義元の腹違いの兄である玄広恵探でした。義元との間で家督争いが起きると、寿桂尼は和解説得のため敵陣に赴いたとの記録が残っています」(小和田氏)
井伊家は今川に仕えたので、直虎が寿桂尼と接触していた可能性は高い。直虎が井伊家の当主と認められたのは寿桂尼の口添えがあったからとする説もある。大河ドラマでも今後、キーパーソンになるかもしれない。