近年の目覚ましいAI(人工知能)技術の進歩が、世界の自動車産業の構図を大きく変えようとしている。それは王者トヨタも例外ではない。イノベーション・コンサルタントの和田憲一郎氏がレポートする。
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グーグルは自動運転の技術開発で、2009年から53台の自動運転車両を使い、延べ224万kmの走行テストを実施してきた。だが、米ビジネス・ニュースラインの報道(2016年12月13日付)によると、今後は「完全自動運転型」の技術開発は諦めて、「運転アシスト型」の開発に方針転換するという。
これはグーグルが研究開発で遅れているという意味ではない。むしろ逆だ。自動運転車は従来の自動車というハードウェアを、AIがコントロールする形になる。AIの開発で、トヨタを含む日本の自動車メーカーはグーグルやアップルに周回遅れとされる。グーグルは先行しているからこそ、技術的限界に気づいたのだ。
しかし、だからといって、自動運転の開発が終わるわけではない。高速道路での自動巡航走行や渋滞時の運転代行はかなり早い時期に実用化されるはずで、それだけでも大きな意味がある。
その自動車は、高速道路に入って自動運転のボタンを押せば、移動中の車内をオフィスにして仕事もできる。大型モニターでアップルが提供する映画や音楽、ゲームなどのコンテンツを家族で楽しむこともできる。こうした車両を含めたパッケージを、ユーザーは月々の定額料金で利用したり、カーシェアリングで利用することも可能になる。
グーグルだけでなくアップルも自動運転の研究開発に投資している。iPhoneが携帯電話を再定義したように、アップルやグーグルが自動車を再定義するのである。そこで懸念されるのがスマホ市場と同じ現象が起きる可能性だ。
たとえば、アップルがiPhoneと同じように、基幹となる自動運転のOSを押さえて電気自動車(EV)をベースに自動運転車の頭脳を設計し、ボディにスマートなアップルデザインをまとわせ、ハードは台湾の鴻海に発注して中国で製造するとしよう。ハードが台湾製や中国製のEVでも買う人は多いであろう。