働く人々に対し、子育て支援の拡充が叫ばれているが、現実にはなかなか普及しない。経営コンサルタントの大前研一氏が、欧米の一流企業の子育て支援制度を例にとり、そもそも人材について日本と欧米にはどのような考え方の違いがあるかについて解説する。
* * *
アメリカでは子育て支援制度を拡充する企業が相次いでいる。
CNNによると、クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレスは今年1月から、勤続年数1年以上のフルタイムとパートタイムの男女従業員を対象とした給与全額支給の育休期間を、主に子育てを担う親の場合は従来の6週間から20週間に延長した。出産に伴う療養が必要な女性従業員は、さらに6~8週間の給与全額支給の産休を取得できる。
保険・金融大手のアクサは、勤続年数1年以上のフルタイムとパートタイムの従業員が主に子育てを担う場合、給与全額支給の育休を16週間まで取得できる。家具大手のイケアは、アメリカ国内のパートタイムも含めた従業員を対象に6~8週間の育休期間は給与全額を支給し、さらに6~8週間は半額を支給するという。
一方、日本の場合は法律上、産休を14週間、育休を最長で子供が1歳6か月になるまで取得できるが、産休・育休中は健康保険から出産手当金、雇用保険から育児休業給付金がもらえるため、大半の企業は給与を全く支給していない。
だが、これは世界の先進国の常識から大きく遅れている。欧米の一流企業は前述のアメリカン・エキスプレスやアクサ、イケアのように規定の産休・育休期間は給与全額支給が当たり前で、それを超えて休む場合は給与が減額されたりボーナスや昇進・昇給がなかったりするが、復帰はいつでもできる、という制度が一般的だ。