ワクチンといえば水疱瘡や麻疹(はしか)など、子供のためのものという先入観があるが、最新の知見からは「中高年こそワクチンで免疫力を高めよ」というアプローチが注目されている。ワクチンで予防できる疾患は、いわゆる感染症の類いにとどまらず、がんや認知症といった中高年世代が警戒すべき“国民病”にまで広がろうとしているのである。
高齢者が感染すると非常に危険なのが日本脳炎と麻疹だ。小児期にワクチンを接種していても、高齢になるとその効果や免疫力が低下するため、発症の危険がある。
子供と違い高齢者の場合、肺炎球菌ワクチン以外はまだ「任意」。費用はかかるが、発症リスクを考えて接種を検討する必要がある。
その一方で、最先端ワクチン研究の“主戦場”ともいえるのが、日本人の死因第1位である「がん」だ。
疫学研究が進み、これまで生活習慣や遺伝との関係性が指摘されてきた「がん」という疾病が、むしろ細菌やウイルスなどによる「感染症」と密接に結びついていることがわかってきた。たとえば、日本人の胃がんの約98%はピロリ菌感染が原因だと明らかになった。白澤卓二・白澤抗加齢医学研究所所長が解説する。