2016年末、衆議院の審議時間わずか6時間で、「統合型リゾート(IR)整備推進法案」が可決した。カジノ解禁へ向けて大きく一歩踏み出した形になったわけだが、様々な問題が残されているのも事実。なかでもギャンブル依存症については、重大な問題とされている。
韓国・ソウルから200km離れた炭鉱の跡地に建つ「江原(カンウォン)ランド」。ここは17あるカジノのうち韓国人が唯一入場許可されている場所だ。ホテルなど宿泊施設もあり国際水準のIRだが、周辺には危険が渦巻いている。物を換金してカジノの資金に充てるための質屋や闇金融、飲み屋や性的マッサージ店がそこかしこに立ち並ぶ。負けがこんでランドの中で自殺する人もいて、町には「お父さん、自殺しないで」と書かれた広報車も走行する。
パチンコ依存で多重債務を重ね、自殺者まで出したという現実を見てきた、弁護士の新里宏二さんが説明する。
「江原ランドにやってくる人たちのギャンブル依存は深刻で、カジノで財産を失い安宿やサウナに住み着くカジノホームレスも出てきました。ランド側は24時間営業を20時間に短縮する、入場回数を1か月に15回に制限するなどの対策をとっているものの、依存症対策に有効な措置にはなっていません」
日本にはすでに大規模なギャンブル市場がある。競馬や競艇、競輪などの公営ギャンブルの売上高は5兆7510億円(2015年調べ)。風俗営業法で「遊技」に位置づけられるパチンコの市場規模は23兆2290億円と推計されている。そして厚労省の調査(2013年)によると、国内で公営ギャンブルやパチンコへの依存症が疑われる人は536万人にものぼるといわれ、これは先進国でもすでにトップクラスの数字。
『やめたくてもやめられない人』の著書がある精神科医の片田珠美さんは「ギャンブル依存症は病気」だと言う。
「ギャンブルによって得られる快感は、性的な快感に通じるくらい強烈です。抗しがたい誘惑があり、やってはいけないと思っていても、やってしまう病気です。良心の呵責があってもやめられず、禁断症状が出て、またやってしまう。負けを取り返すためにギャンブルをやめられず、サラ金で借金して、自己破産して、生活保護になって、心身ともにボロボロになってようやく病院へ行ったときには、何もかも失った状態のかたが多いんです」
20年前からパチンコにハマっているお笑い芸人の椿鬼奴(44才)は、今でも月に1、2回はパチンコに行く。
「お金がない頃は切実でした。15年前は、毎日のように行ってましたよ。もっと派手に生活したいとパチンコに行くんですが、結局負けて持ち金ゼロになり、キャッシングして勝つまで頑張るという生活でした。周りの知人でもお金がない人ほど熱中してますよね、勝てば大きいので。カジノ? 韓国とか、海外旅行先で行ったことはありますが、数時間遊ぶくらいですよ。でも身近にできたら、楽しみな半面、負けを取り返しに次の日も行ったりするようになるのかなって、正直不安もありますね」