習近平は、死ぬまで最高権力者の地位にあった毛沢東を目指して動き出した今秋に予定されている中国共産党大会を前に、「絶対権力」を握るための闘いが始まった。習は不満分子の弾圧を強化しているが、8度も暗殺未遂事件に巻き込まれているとも伝えられる。大陸は不穏な空気に覆われた。ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。
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「ある人は政治的野心を実現するために、党や国家の権力を盗み取ろうと妄想し、党分裂の陰謀活動を画策、罪に手を染めている。これは国家の政治の安定への重大な脅威となっているのだ」
これは習近平国家主席の盟友で、最も信頼している腹心、王岐山・中国共産党中央規律検査委員会書記(党政治局常務委員)が昨年10月31日、北京で開かれた中国人民政治協商会議(政協)常務委員会で行った重要講話の一部だ。
王は党最高幹部「チャイナセブン」の一人で、習近平の意を受け第一線で反腐敗運動の全面的な指揮をとっているだけに、政協という極めて公式で重要な場で「国家や党の権力を盗み取り」「党分裂の陰謀活動」に関わっている「野心家、陰謀家」を強い調子で糾弾するのは極めて異例だ。
北京の党幹部筋は王の心の内を次のように読み解く。 「王岐山は習近平指導部打倒を画策する不満分子の存在を明らかにし、習近平指導体制の存続に強い危機感を表明。野心家、陰謀家の全面摘発の強い決意が込められている。これは習近平の心の底からの叫びでもある」
王は講話の中で習近平が3年前の党中央委員会総会で行った重要演説の内容を明らかにした。それは「党の政治規律、政治原則を無視する人々の七つの振る舞い」と呼ばれており、次のようなものだ。
「自分の出世のために、周りを身内で固めてよそ者を排除し、仲間内でこそこそと振る舞って派閥を作り、讒言で人を陥れてカネやモノで人心をたぶらかして自分の側につけ、利をもって官位を与え、自分勝手に振る舞いながらも上には面従腹背し、思う通りに権力を振るうために派閥を大きくし、中央からの命令に逆らい叛旗を翻す」
腐敗幹部の典型的な行動であり、王は具体例として、すでに獄中にある周永康や薄熙来、郭伯雄、徐才厚、令計画ら党・軍の元大幹部を挙げる。