「黄昏流星群」「島耕作シリーズ」などで知られる漫画家の弘兼憲史氏(69)は、定年後の生き方として「人生の整理」を説いている。その要諦とは。
自らも60歳を過ぎて「身辺整理」を始めた弘兼氏は、「持ち物を半分にしよう運動」として、様々なものを処分したという。昨年11月には『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(海竜社)を上梓し、サラリーマン時代の名刺やスーツなどの持ち物を半分捨てることに加えて、年賀状をやめる、など「人間関係」についても身軽になることを勧めている。
弘兼氏が提言する人間関係の整理には、「妻」も含まれる。「今もラブラブの夫婦には関係ない話」と前置きしながらも、良好な関係を保つためには「奥さんとなるべく一緒にいないこと」「お互いの程よい距離を保つこと」の2点を説く。“定年退職した男の価値はゼロ”という謙虚な気持ちで、妻からも自立したほうがいいというのだ。
「結婚生活で、『死ぬまでお前がいないとダメ』という人はあまりいないでしょう。それまでお互いに干渉し合って生きてきたんだから、60過ぎたら互いの生き方を尊重した方がいい。
定年後にありがちな『妻と旅行』幻想も捨てるべきです。奥さん孝行で自分の株が上がると期待しても、嫌われる可能性の方が高い。奥さんから誘われたなら別ですが、そうでないなら『友達と行っておいでよ』と旅費を渡したほうがよっぽど株が上がります」
“手ぶら人生”を勧める弘兼氏は、親兄弟や子供などの「家族」との関係も見つめ直すべきだとしている。
「『家族は結束しなければならない』という強迫観念で互いを縛り合うのは、苦しいこと。現実には家族といっても自分とは他人だし、合わないこともある。疎遠になった兄弟にあまり会いたくないという人も実は世の中には結構いるんです。
家族仲が良ければそれでいいのですが、家族がいずれバラバラになるのは自然なことで、家族一丸でいる必要はないんです」