多くの東京都民の支持を得て都知事となった小池百合子氏は、「豊洲移転問題」「五輪会場問題」で大きな注目を浴びた。だが、大前研一氏は「このままでは、小池知事は“弁慶の立ち往生”になる」と警告する。
* * *
このままいくと東京都は、謀略が渦巻き、身内の騙し合いが横行するアラビアンナイト(千夜一夜物語)の世界になってしまうと思う。
すでに小池知事は予算編成のやり方を変更し、200億円の「政党復活予算」を廃止したことで、都議会と全面対決状態になっている。これは組織を円滑に動かすべきトップのあり方とは正反対の方向だ。
今のところは小池知事がスポットライトを当てたところだけ、利権で動いてきた“頭の黒いネズミ”のダンスが止まったという状況である。
しかし、予算が潤沢で国の監査を受ける必要がない東京都は、とんでもない税金の無駄遣いと複雑な利権構造で成り立っている「伏魔殿」であり、利権をむさぼり私腹を肥やしている頭の黒いネズミがあちこちにいる。小池知事がネズミを1匹1匹叩いても際限がなく、全体は何も変わらない。
ましてや小池知事が去ってしまえば元の木阿弥で、再び「禿山の一夜」が始まる。自分がいなくても利権政治が発生しない都民参加型の仕掛けを作ったほうがマスコミ受けはしなくても永続性はある。
今後も小池知事が現在のスタイルを続けていったら、おそらく四方八方から批判の矢が飛んできて「弁慶の立ち往生」になるだろう。
なぜなら、敵を先に作りすぎたからである。味方を作る前に都議会自民党をはじめとする大勢の敵を作り、さらに豊洲の盛り土問題に関係した歴代幹部職員を懲戒処分にして、都庁職員も敵に回してしまった。
まさに四面楚歌であり、この先、予算案や条例案がすんなり通るとは思えない。もし1年後に何も成果が出ていなかったら、頼みの綱である都民の支持も失ってしまいかねない。