かつて、オーストラリアで常識破りの“黒い白鳥”が発見されたことから、〈事前に予想できない衝撃の大きな出来事が突然起きる〉ことの例えとして金融用語などで使われている「ブラック・スワン」。2006年に刊行された元ヘッジファンド運用者、ナシーム・ニコラス・タレブ氏による同名の著書がベストセラーとなったことで、一躍注目を集めた理論だ。
2008年のリーマン・ショック時にはこれまでの金融業界の常識では考えられないほどの株式市場の大暴落が起こったが、これなどまさにブラック・スワンの好例といえるだろう。
毎年、年末年始になると、銀行や証券会社などがその後1年間に起こり得る世界恐慌のダメージを最小限に抑えるため、ブラック・スワンに発展しそうなリスクシナリオをレポートにまとめ、警鐘を鳴らしてきたが、今年もさまざまなブラック・スワンが予測されている。
例えば、中国人民元の「完全変動相場制」への移行がある。もしそうなれば、人民元が急落し、中国経済の悪化が世界経済に大きな影響を与えるとの予測だ。
また、「プラザ合意」の再来を指摘する向きもある。これは、1985年に急激なドル高で疲弊した米国経済を立て直すため、日米欧の国際協調で人為的にドル安に誘導した為替政策のことを指す。当時、1ドル240円台だったドル/円相場は一気に円高が進み、1988年には1ドル=120円台とわずか2年半の間に円の価値は約2倍になった。