1月23日に亡くなった俳優・松方弘樹さん(享年74)。かつて『元気が出るテレビ!!』などで共演したビートたけしは、松方さんの死に何を思うのか。新刊『テレビじゃ言えない』が話題のたけしが、テレビでは話せなかった松方さんとの思い出を振り返る。たけしによると、松方さんは「とんでもなくカネ払いがよかった」という。ある時は京都のステーキ店で5人で2000万円の勘定を現金払いをしたこともあったという。
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あの人は別にオイラやら出演者だけにおごってたわけじゃない。スタッフにも大盤振る舞いだった。
『元気が出るテレビ!!』じゃ、毎年春と秋に関係者を一堂に集めて、「スタッフパーティ」というのをやるんだよ。
そのときに、松方さんは出演者とスタッフの全員に小遣いをくれるんだけど、オイラなんかはさすがに辞退しちゃうからね。そしたら、その残ったご祝儀をめぐって、大ジャンケン大会だよ。あの頃は本当におおらかな時代だったね。
オイラがドラマや映画の撮影で京都・太秦の撮影所に行ったときも、松方さんのそういう面倒見のよさのおかげで助かった。
松方さんは裏方に対してもそんな風にカネ払いがいいんで、「お兄ちゃん、お兄ちゃん」って呼ばれて、うるさ型のスタッフみんなから慕われてるんだよな。逆に、ケチなヤツは大変な目に遭っちゃう世界だからね。撮影所での扱いがゼンゼンちがうんだよ。
オイラが太秦で「宜しくお願いします」って頭を下げたら、「ああ、お兄ちゃんに“タケちゃんのことよろしくな”っていわれてますから」って撮影所の一番端にある「特別室」って楽屋に通されたんだ。
並びにあるのが、鶴田浩二さんとか高倉健さんとかの専用室でさ。その横にあるすごい特別室で、いきなりそんなところに入れてくれたんだよな。全部松方さんの「顔」のおかげだよ。