「訂正でんでんというご指摘はまったく当たりません」。1月24日の参議院代表質問で、民進党の蓮舫代表の質問にこう答えた安倍晋三首相。ネット上では「云々(うんぬん)」を「でんでん」と読み間違えたと大騒ぎになり、官邸関係者も「誤読ではないか」と認めている。
「こんな漢字も読めないのか」
「最低限の教養は身につけてほしい」
など誤読を揶揄する声も相次ぐが、ちょっと待って。問題はそこじゃない。読み間違えたということは、国会答弁には「台本」があって、首相や大臣はそれを読んでいるだけなの? 意外に知られていない、国会答弁の作られ方を紹介しよう。
与野党の議員からの質問に首相や大臣らが答える国会答弁。野党議員からは厳しい質問が飛ぶが、実は「何を質問するか」は事前に通告するのが慣例になっている。“国会の審議を円滑に運ぶため”というのがその理由だ。
「各省庁の守備範囲はすごく広いので、大臣が“どんな質問にもすぐに答える”のはまず不可能です。しょっちゅう答弁に詰まっていたら、審議が全然動きません」
と政治アナリストの伊藤惇夫さん。首相の施政方針演説や所信表明演説に対する代表質問では、質問自体が各党の方針を示すことになるので、質問の全文を通告するケースが多い。一方、国会での一般質疑や各委員会での法案審議などは「一問一答」形式なので、箇条書きで通告することがほとんどだ。
質問の項目が議院事務局に通告されると、内容に応じて各省庁に「答弁作成」が割り振られる。すると官僚たちは質問の内容をもっと詳しく知るために、質問する議員に非公式に確認しにいく。
衆議院事務局に勤めた経験もある元参議院議員の平野貞夫さんが言う。