節分は立春の前日。立春とは1年を二十四節気に分けた時に使われる言葉で、太陽の角度が315度になる日のこと。しかし1年は365日なので24では割り切れず、多少のズレが出てくる。そのため立春は2月4日頃となり、節分は2月3日になったり、2月2日や2月4日になることもある。ちなみに2020年までは2月3日だが、2021年は2月2日が節分となる。
ではそもそも節分の始まりとは? 和文化研究家でオールアバウト「暮らしの歳時記」ガイドの三浦康子さんが説明する。
「中国伝来の『追儺(ついな)』という行事に由来しています。もともとは大みそかの行事として宮中に入ってきましたが、室町時代から立春の前日の節分に定着したといわれています。本来、節分とは立春・立夏・立秋・立冬の前日のことで年4回ありますが、旧暦では立春の頃に元日が巡ってきましたし、二十四節気では立春が一年の始まりです。さらに陰陽道では、年越しにあたる節分の夜に陰から陽に変わるとされました。そこで立春前日の節分に、新年に向けて邪気を祓はらうようになりました」(三浦さん)
三浦さんによれば、邪気や魔物の象徴が鬼であり、鬼に豆をまいて退治するという慣わしが広がっていったという。
「日本では穀物に霊が宿るとされています。大豆はその穀物の中でいちばん大きく、投げても音が大きい。音で祓うという意味もあるんです。陰陽道でも豆が邪気祓いに効果的とされています。また豆は魔滅、豆を煎ることが“魔目を射る”に通じ、拾い忘れても魔の芽が出ないなど、思いを託した言葉もある。いろいろな要因で広まりやすかったのだと思います」(三浦さん)
◆「鬼は内」ってどういうこと?
豆まきの時の掛け声、「鬼は外、福は内」が常識と思ったら、「鬼は内」の地域も多数存在していた!
鬼に由来のある、京都の大原神社は、「鬼は内、福は外」と口上を述べるのだ。これは、神社を厄と見立て、氏子に福が行くようにという意味から。江戸時代の藩士が“九鬼さん”だったことも由来している。
「鬼頭さんや鬼沢さんも名字に鬼がつきますから、『鬼は外』と追い出してしまっては縁起が悪い。また、商売をやっている家でも、鬼=大荷としてとらえ、大きな荷物が内(家・お店)に入らないと商売繁盛につながらないため、『鬼は内』というところが多いそうです」(三浦さん)
同じ『鬼は内』という神社・寺院でも、元興寺(奈良県奈良市)は「福は内、鬼も内」、千蔵寺(神奈川県川崎市)は「福は外、鬼は内」、鬼鎮神社(埼玉県比企郡嵐山町)は「福は内、鬼は内、悪魔外」、仏立山真源寺(東京都台東区)は「福は内、悪魔外」など多種多様。
読みながら気づいた人もいるかもしれないが、実は寺社でも豆まきの口上は「鬼」から始まるところもあれば、「福」から始めるところもある。一般的な家庭でも、「鬼は外、福は内」だけでなく、「福は内、鬼は外」という順のお宅もあるだろう。どっちが正しいのだろうか?