韓国・釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置で反日感情がヒートアップしているかと思いきや、日本を訪れる韓国人観光客は逆に増えている。その背景を産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
* * *
外国人の日本訪問客が昨年、2400万人を突破した。日本政府の観光振興策のせいもあるが急増だ。外国人観光客というと“爆買い”などで中国人客のことはよく話題になるが、予想以上に急増しているのが第二位の韓国人客。一昨年、400万人を突破し昨年はついに500万人突破となった。
人口が13億を超える中国に比べ韓国の人口はわずか5000万だから、韓国人客がいかに多いかだ。韓国というと日本では反日イメージが強いが、韓国人は意外に日本好き?
いや、日韓関係そのものは年初から釜山総領事館前の慰安婦像問題でまた揉めている。慰安婦アレルギー(?)の日本世論にはあらためて反韓・嫌韓ムードが広がり、日本政府は駐韓日本大使の一時帰国や経済協力中断など異例の“報復措置”を発表。本来なら韓国側で官民挙げて「日本ケシカラン!」と反日ムードが高まってもいいのだが、どうも盛り上がりを欠いている。
この背景には、韓国が政治混乱で「日本どころではない……」という事情もある。
「崔順実スキャンダル」に端を発する朴槿恵大統領弾劾問題や、来るべき大統領選の前哨戦スタートで“政治大好き”の韓国人が国内政治で完全に浮ついているからだ。
それに弾劾による大統領職権停止で外交機能もストップ。米国のトランプ新政権とのコネ作りがままならず、米軍の新ミサイル防衛網配備にイチャモンをつける中国からは韓流文化輸入規制など“報復”されている。韓国メディアの年初の話題は「外交的孤立」なのだ。
経済も「崔順実スキャンダル」がらみで検察による財閥イジメが目立つ。サムスンをはじめ財閥のトップを呼び出すテレビ映りなど、目先のことしか考えない「ポピュリズム(大衆迎合主義)体質」の検察の無理やり捜査で、今年の韓国経済(企業)の展望は暗い。