世界では、どれだけの人がどのようにして安楽死を迎えているのか。世界の安楽死事情を取材するジャーナリストの宮下洋一氏がレポートする。
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安楽死は、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」のふたつに分類される。前者は「医師が薬物を投与し、患者を死に至らす行為」。後者は「医師が治療を開始しない、または治療を終了させ、最終的に死に至らす行為」と定義される。
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、コロンビア、オーストラリア(ノーザンテリトリーの州都ダーウィン)では、そのいずれの行為も合法である。昨年6月には、カナダでも認められた。
安楽死というと、一般的にイメージされるのは「積極的安楽死」で、オランダやベルギーが主流だ。主治医が患者の自宅を訪れ、家族や友人の前で、患者に致死薬を投与して死に導く。この方法で死を選ぶ患者は、家族に別れを告げ、自宅で死を迎えることが特徴だ。
一方、「安楽死」とは別に「自殺幇助(ほうじょ)」という方法による死に方もある。こちらも、安楽死同様、「積極的自殺幇助」と「消極的自殺幇助」のふたつに分けて考えられる。
前者は、「医師が薬物を投与するのではなく、患者自身が投与して自殺する行為」。後者は「回復の見込みのない患者に対し、延命措置を打ち切ること」で、一般的に日本語で表現される「尊厳死」がこれに当たる。
自殺幇助を行なう代表国はスイスだ。同様の行為が許可されているのが、米国のオレゴン、ワシントン、バーモント、モンタナ、カリフォルニア、コロラドの6州である。
最近では「自殺幇助」という用語に嫌悪感を示す人々が多く、「医師幇助による自死」という表現に変わりつつある。ただしこの用語についても、死に対する恐怖を取り除く効果があることから、「むしろ死を煽っている」と批判する専門家もいる。
スイスでは、患者が毒薬をコップに入れて飲み干すこともあるが、多くは医師が準備した薬物入りの点滴を患者自身が開け、体内に流し込む方法が主流。患者は、痛みを伴うことなく、20秒ほどで死に至る。