19年ぶりに日本出身の新横綱が誕生したとあって、角界が盛り上がりを見せている。だが、稀勢の里が所属する田子ノ浦部屋は、他の部屋に出稽古に行くことはないし、よそから出稽古を受け入れることもない、異色の相撲部屋として知られている。
所属力士たちも巡業などで他の部屋の人間と交わろうとしないが、それは先代・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の教えを今も守っているからだ。しかし、横綱を出した部屋となると、他の部屋と交流しないわけにはいかなくなる。
1月26日に明治神宮で行なわれた奉納土俵入りでは露払いとして同じ一門の二所ノ関部屋の松鳳山の手を借りた。その前日の綱打ち行事では、やはり一門の若手が大量動員された。
田子ノ浦部屋には横綱と高安の他に三段目2人と序二段3人しかいないのだから、他の部屋の協力を仰ぐほかないのだ。場所入りすれば、昇進によって綱や化粧まわしなどの明け荷(竹で編んだ行李)が3つになるため、付け人も10人前後必要になるのが通例だ。この人手も一門に頼るしかない。
「つまり、これからはよその部屋との交流が密にならざるを得ない。これまでガチンコ部屋という“無菌室”で育ってきた力士たちが、いきなり外に出るようなものです。他の部屋に借りを作るなんてこれまでなかったわけですから、土俵の上にもどんな影響があるか、初めてのことなので本当にわかりません」(担当記者)
ガチンコ部屋のままでいられるのかという問題だ。ただでさえ稀勢の里には、「モンゴル戦隊」による包囲網が形成されつつある。