「イヤな渡世だなァ…」。市川海老蔵(39才)が演じる座頭市の決め台詞である。2月4日、海老蔵が主演する六本木歌舞伎「座頭市」が東京・EXシアター六本木で始まった(20日まで)。
六本木歌舞伎は、海老蔵が歌舞伎の新境地を開くべく始めた舞台。第二弾となる今回は、脚本・リリー・フランキー、演出・三池崇史という異色のコラボで、海老蔵が得意の「目力」を封印し、盲目の座頭市を演じる。今回の公演に先駆けて、海老蔵は「歌舞伎と女性」についてこう語っていた。
《歌舞伎が今の形になってから二、三百年という月日が経ってそろそろ考え直す時期がきていると思うし、垣根というものがありますが、本来はそれがないはずだと僕は思っています。(中略)性別を理由に女性が歌舞伎をできないことが、僕にはわからなかったんです》(「座頭市」パンフレットより、以下《》内同)
今回、1人の女性が女人禁制とされる歌舞伎の舞台に立った。名門・音羽屋の長女・寺島しのぶ(44才)だ。
寺島の父は人間国宝である尾上菊五郎(74才)、母は女優の富司純子(71才)。歌舞伎の名家に生まれた彼女が最初に試練を味わったのは5才の時。音羽屋の跡継ぎとなる弟・尾上菊之助(39才)の誕生がきっかけだった。寺島はこう述べている。
《歌舞伎の家に女として生まれるということは、私にとってすごく過酷だったんですよ。弟が生まれるまでは「蝶よ花よ」となんでもやらせてもらいましたが、五年後に弟ができると、がらりと世界が変わる。それはまるで天変地異のようでした》
恋路でも深い痛手を負った。幼なじみの市川染五郎(44才)と結婚を視野に入れて交際し、“歌舞伎役者にはなれなくても、梨園の妻に…”と願ったものの、2003年に染五郎が資産家令嬢と結婚。またも歌舞伎にかかわる道は閉ざされた。