歴史を知る側から見ると、現在の世界の状況は極めて深刻に映るようである。作家の落合信彦氏は米国の先行きについて警戒感を隠さない。
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アメリカの大統領は、世界の未来を見据え、自由や民主主義の精神を守る覚悟が必要だ。それがアメリカのリーダーの「器」というものである。「雇用を守る」とばかり繰り返すトランプは、アフリカのどこかの独裁国家の大統領くらいの器しかない。
その小さな器では、アメリカ国内をもまとめることができない。トランプは、アメリカを真っ二つにしてしまった。「富裕層vs貧困層」「白人vsヒスパニック・黒人」……。とくに差別を煽ったことは罪深い。
「メキシコ移民はレイプ犯」発言に代表される人種差別。さらに女性たちや、障害を持つ人々への差別。
この偏狭な男の発言は、アメリカ全体の空気も偏狭にしてしまった。日本ではあまり報じられていないが、トランプが大統領選に勝利してから、アメリカ各地で差別的な行動が激化しているのだ。ボストン郊外の大学では、「TRUMP」と書かれた旗を掲げたピックアップトラックに乗った2人の男が侵入して、黒人学生が住んでいる寮に向かって罵声を飛ばし、さらに唾を吐きかけた。
ユタ州では、ヒスパニック系の高校生が白人生徒から「不法入国者!」「メキシコに帰れ!」「メキシコにタダで帰れるから喜べ!」などと嫌がらせを受けた。さらに、アメリカのあちこちのトイレでは、「Whites Only(白人専用)」などという落書きが増えた。
トランプの存在が、アメリカ社会を分断したのだ。
実は、ジョン・F・ケネディが大統領に就任した当時も、アメリカは2つに割れていた。
「I Have a Dream.」で有名なキング牧師のリンカーン記念館演説の3年前にあたる1960年。黒人差別は酷い状況であり、アメリカ社会は「白人vs黒人」で一触即発の状態だった。