経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、アメリカツアーでメキメキと実力を上げているプロゴルファーの松山英樹に注目。
* * *
松山英樹の快進撃が続いている。米男子ゴルフツアーのフェニックス・オープンでプレーオフを制して連覇を果たし、米ツアー通算4勝目は日本人初の最多勝利となった。
それだけに日本だけでなく欧米メディアでも、彼の強さの秘密、勝利の要因を、様々な角度から分析している。大きな飛距離と安定したドライバーショットが強さの秘密とする記事もあれば、アプローチのうまさやプレーの精度、強い精神力と分析しているところもある。
松山は今、世界で最もホットで勢いのあるゴルファーなのだが、優勝会見での彼は、にこやかな表情ながらも実に謙虚(?)だった。優勝当日のプレーについては「いいプレーかどうかわからないけど…」とわずかに首を傾げ、「いいプレーが続いているから優勝しているのでは?」との質問には「そんなにいいプレーをしているかなと感じるが…」と、またも首を傾げた。
謙遜しているというより、自分のプレーに納得していないようだ。結果としてはいいプレーになっているのだが、本人としては「結果と自分のゴルフの内容がちょっと一致していない」らしい。それは“仏頂面”と指摘されるように、プレーの随所で見られる彼の表情からも伺える。
ドライバーで、おぉ!というショットを打っても、画面に映し出される松山の表情はどこか冴えない。フェアウエーの責めやすい場所にボールが落ちても、難しそうな表情のまま。グリーンのピンそば近くにボールが落ちても、ニコリともせずに下を向いて歩き出す。
微妙なスイングの違いなど素人の私にはわからない。だが、他のゴルファーを見ていると、好調な時と不調の時、うまくいった時とそうでない時では、動作や表情に何らかの変化が出やすいものだ。そんな変化が松山にはほとんど見られない。うまくいったと松山が感じた時が、実にわかりにくいのだ。
もしかすると、これも松山の強さの秘密かも?と思う。松山の場合、プレーをしている間は、感情の揺れや振れ幅が小さいのではないだろうか。
どんなスポーツでも、調子よく波に乗っている時がある。こういう時は、自信が出て、いくらでも勝てそうな気がするものだ。うまくいけばいくほど期待が大きくなり感情が高ぶり、できた!という喜びと、よかった!というほっとした安堵感から、逆に油断が生まれやすくなる。
対戦相手がいる球技ならポイントを取った後、サッカーならゴールを決めた後、ゴルフならショットを打った後、やった!と思うと一瞬、気が緩みやすくなる。すると集中力や注意力、緊張感がそこでいったん途切れてしまいかねない。