2月2日、午前0時過ぎ。気温は3℃で、肌を刺すような冷たい風が吹いていた。東京都府中市の府中駅から国道沿いを歩いて5分、交差点に見える『ロイヤルホスト 府中東店』のオレンジ色の看板が、心なしか体を温かくしてくれたように思えた。しかしその扉には『営業時間変更の知らせ』の貼り紙が――。
ファミリーレストラン『ロイヤルホスト』を経営するロイヤルホールディングスは、1月31日をもって24時間営業を終了した。かつては店舗の大半が24時間営業だったが、2011年頃から営業時間の短縮化が進み、府中東店(東京)を残すのみとなっていたのだ。2月1日からの営業時間は平日の朝9時~翌2時、土日祝は朝7時~翌2時。つまり、2月1日の26時(2月2日の午前2時)に、“24時間営業”としての最後の明かりが落とされたことになる。
◆年中無休・24時間営業 「便利」を追い続けた社会の終焉
深夜営業を大幅に縮小すると決めたのは、『ロイホ』だけではない。『ガスト』や『ジョナサン』、『バーミヤン』などを経営する『すかいらーく』は、全国で約2500店のファミレスを展開しているが、深夜営業(24時間、または深夜2時以降までの営業)をしていた約1000店のうち、約750店を、深夜2時閉店、朝7時開店へと移行している。
両社ともにその縮小の理由に、「深夜の客足の減少」と「従業員の長時間労働への懸念」を挙げている。
かつては深夜営業を行えばそれなりの来客が見込め、深夜の時間帯での勤務を望む労働者もたくさんいた。しかし、時代は変わった。
『ファミリーレストラン 「外食」の近現代史』(光文社)の著者・今柊二さんはこう説明する。
「ファミレスが24時間営業を始めたのは1980年代のこと。バブル期も重なり、若者たちが夜を徹して仕事も遊びも全力投球でした。ところがそういった世代はすっかり中高年になり、今の若い世代は夜、外に出掛けることもなくなりました。
一方で、夜に集まったり食事をできる場所が、かつてはファミレスだけだったのが今はそうじゃない。回転寿司もあれば、焼き肉もあるし、フードコートもある。カラオケや漫画喫茶もある。時代とともに多様化しているということなんだと思います」
従業員の確保も切実で、人材を獲得するために賃金はどんどん上がり、売上高とコストが見合わなくなっている。さらにいえば、少子化による若年層の労働人口の減少がボディーブローのように効いているのだ。そこには、日本の抱える構造的な問題が横たわっている。