ドナルド・トランプ大統領は「再びアメリカを強くする」と繰り返し述べ、雇用を増やすと公約し、そのために外国企業への非難を繰り返している。しかし、今、世界でもっとも強い企業はアメリカの企業ばかりだ。すでに強いのである。経営コンサルタントの大前研一氏が、なぜ、アメリカの企業がそんなに強いのかについて解説する。
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2016年の世界の企業の時価総額ランキング(『日経ヴェリタス』1月8日付)では、首位から12位まで、ずらりとアメリカ企業が並んでいる。しかも、上位1000社のうち実に370社がアメリカ企業だ。
なぜアメリカ企業はそんなに強いのか? ランキングの上位に入っているのは、1位のアップル、2位のアルファベット(グーグルの持ち株会社)、3位のマイクロソフト、6位のアマゾン・ドット・コム、7位のフェイスブックといった、昔は存在すらしていなかったICT(情報通信技術)企業である。つまり、私が言うところの「見えないビジネス新大陸」、21世紀のサイバー&デジタル新大陸でアメリカ企業が圧勝し、それがアメリカの富の源泉になっているのだ。
ドナルド・トランプ大統領は「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」と叫んでいるが、現実はかつてないほどアメリカ企業がグレートで強くなり、アメリカ以外の国からすれば「メイク・アメリカ・ウィーク・プリーズ」と言いたくなるような状況なのである。
たとえば、時価総額ランキング22位のアメリカ企業ウォルマート・ストアーズは、大半の商品を中国やベトナムなどの海外から調達している。それら海外製品が溢れている現状に対してトランプ大統領は「中国がアメリカの雇用を奪った」と批判するが、中国はウォルマートの購買先の一つにすぎない。しかも、品質や納期などの条件は厳しく、ウォルマートに納入することほど難しいことはない。
こうしたアメリカの「真実」から見ると、トランプ大統領がいま本当に取り組むべきは、時価総額ランキング上位の巨大企業が全世界で創り出した莫大な利益をアメリカ本国に還元させることだと思う。