医療の進歩により、がんになった後も以前と変わらぬ人生を送れる人が増えている。ところが依然として、世に出てくる闘病記は暗く過酷なものばかり。もっと明るく、あっけらかんと語ったっていいではないか。2010年に前立腺がんが発覚したお笑い芸人・間寛平氏(67)が、自身のがん体験を語る。
「今も酒は浴びるほどガンガン飲んでますわ。1日にビール3本と日本酒4合くらい(笑い)。自分のことを病人やと思ったらあきまへん。病気のことは忘れるのが一番ですわ」
そう笑う間氏に前立腺がんが発覚したのは2010年1月。それは間氏にとって最悪のタイミングだった。マラソンとヨットで地球を一周する「アースマラソン」挑戦中のトルコ・イスタンブールの地だったからだ。
「イスタンブールでX線検査を受けたら、PSA値(前立腺がんマーカー)が40にまで上昇していたんですわ。通常は4以下が基準値。出発前の検査では健康に何の問題もなかったし、“こんなに走れてるのに何でやねん”って、医師に突っ込みましたよ」
幸いにも転移はなく、がんは初期のものだった。医師から「アースマラソンを完走してから手術しても間に合う」と言われたため、そのままホルモン療法を受けながら走り続けたという。
「薬を飲んだ朝は体がしんどいんやけど、午後には元気になってナンボでも走れました。でも男性ホルモンを下げる薬だからか、沿道にキレイな女性がいても、これまでのように興味をソソられない。代わりにゴツい野郎に目が行ってしまう(笑い)。“ゴールするまで日本に絶対帰らへん”と宣言していたから、毎日50kmは走りました」
その最中、マラソン仲間から「サンフランシスコに名医がいる」と教えられ、間氏はトルクメニスタンでマラソンを一時中断。すぐにサンフランシスコに飛んで1か月半にわたる放射線治療を受けた。